【NEWS RELEASE】20180718 「豊後ノ國 府内薪能」時間樹
能楽史上初、立体造形による老松を国東時間が制作
~ 「豊後ノ國 府内薪能」にて伝統芸能と現代アートのコラボレーション ~
立体造形シリーズFLATS(フラッツ)の製作を行う、国東時間(くにさきじかん)株式会社(大分県国東市、代表取締役 松岡勇樹、以下国東時間)は、「第33回国民文化祭・おおいた2018/第18回 全国障害者芸術・文化祭おおいた大会」のリーディング事業の一つとして開催される「豊後ノ國 府内薪能」(10月20日土曜日、大分市)の舞台に供する「老松(おいまつ)」を史上初めて立体造形作品として制作します。
能舞台には、正面背景の「鏡板(かがみいた)」に「影向(ようごう)の松」と呼ばれる老松を描く伝統の様式があります。このたび国東時間では、600年以上に及ぶ能楽の歴史において史上初となる、立体化した「影向の松」を立体造形作品『 FLATS 4D Art Plant 時間樹(じかんじゅ) 』として制作することとなりました。これは「第33回国民文化祭・おおいた2018」のプログラムとして、演者に二十六世観世宗家 観世清和氏、狂言に野村萬斎氏他を迎えて上演される「豊後ノ國 府内薪能」の特設舞台に設置されるものです。鏡板に描かれた「影向の松」には「神様の依り代である老松の影が舞台に映されたもの」という特別な役割があり、今回製作する老松は平和市民公園能楽堂(大分市)に描かれた老松の姿を立体化するものです。完成時には神事を執り行い神様の御守護を祈願して静粛なる能舞台にて出演者の皆様とご観覧のお客様をお迎えします。
現在、平面の老松の姿を立体に起こす作業工程にあり、10月20日の本舞台に向けて鋭意制作しています。伝統ある能楽の一大変革ともなる立体造型の「影向の松」が完成していくプロセスを、広く国内外の皆様にお伝えいただきたくご案内申し上げます。
なお詳細については別紙資料をご確認ください。
別紙資料(pdf)
【本件に関するお問い合わせ先】
国東時間株式会社
〒873-0355 大分県国東市安岐町富清3209 番地2
TEL 0978-64-3002 FAX 0978-64-3003
代表取締役社長 松岡勇樹(まつおかゆうき)
kunisakitime.com
Email: info@wtv.co.jp
別紙資料:1
「影向の松」制作にあたって: 松岡勇樹
この度豊後ノ國府内薪能の開催にあたって、「影向の松」の制作をお引き受けさせていただくことは我が身にとって光栄の至りです。能舞台において通常は鏡板に平面として映る老松の姿を立体として現出させることは能楽史上初の試みです。私の二十年の制作活動はこの仕事のためにあったのかと、我が身の引き締まる思いです。現在私はいまだ誰も見ぬそのイメージと向き合いながら日々制作を進めております。対象となるイメージを解体し、再構築していく手続きが私の造形作法です。三次元を二次元に解体し、それらをもういちど三次元に組み上げていく、その造形過程は現世的な欲望や汚れを払い、浄めながら、神仏の依代(よりしろ)にふさわしいニュートラルな空間を創っていく過程でもあります。立体として立ち上がってくる影向の松はきっと人の生と死を超えた永遠の時間を体現するものになるでしょう。そういう意味で私はこの作品を「時間樹(じかんじゅ)」と名付けました。
別紙資料:2
作品『 FLATS 4D Art Plant 時間樹 』(能舞台のための立体老松)制作工程:
老松制作の作業工程は「幹」部分の制作と「葉」部分の制作工程に分かれます。幹の部分は主に大分県産日田杉の間伐材を使って作成されます。葉の部分は和紙を型抜きして松葉ユニットを大量に作成します。最後にこれらを舞台上で合体させます。ナチュラルな木肌の色の幹と枝に、和紙でできた無数の真っ白な松葉がとりついて幽玄な老松の姿が舞台に立ち現れるでしょう。
「幹」部分制作の第一段階は平和市民公園能楽堂(大分市)の鏡板に描かれた老松の姿をもとにハリガネを曲げて立体の枝ぶりのスタディモデルを制作します。巷間で姿が良いとされる各地の著名な松の樹を見に行ってスケッチし、あるいは松の盆栽を研究しながら、枝ぶりの形状を作成します。こうやって出来上がったハリガネの幹と枝に粘土で肉付けしたうえで削り出し、形をととのえてミニチュアモデルを完成させます。
第二段階はこのミニチュアモデルを3Dスキャナーで三次元データとしてコンピュータに取り込みます。このデータをもとにxyz3軸方向で切断解体してFLATSの部品を1つひとつ設計します。およそ2000個の部品を作成する予定です。
第三段階は日田杉の板材からレーザー加工機で部品を切り出し、組み立てます。仕上がり寸法はそれぞれ幅:480cm 高さ:240cm、奥行き:400cmになる予定です。
鏡板に描かれる老松の「葉」は抽象的に描かれているので、立体の制作にあたっては実際の松の葉の形状をもとにして、和紙を型抜きした松の葉のユニットを数千個作成し、幹の部分の接合部に差し込んでいきます。これらの工程はすべて手作業で行われます。
平面イメージ(鏡板の松)から立体像を起こし、それをまた平面に解体し、もういちど立体として再構築する、この工程こそがFLATSの設計思想の真髄といえるでしょう。それぞれの手続き性の中で余分なものが削ぎ落とされ、結果として透明感のあるニュートラルな空間が現出するはずです。
製作スケジュール: 7月 ミニチュア模型制作
7月末 3Dスキャン(データ採取)
8月 幹本体設計、松葉制作開始
8月末 原寸大模型試作
9月 設計修正、実作製作
10月中旬 完成
別紙資料:3
薪能概要:
「豊後ノ國 府内薪能」
(第33回国民文化祭・おおいた2018/第18回 全国障害者芸術・文化祭おおいた大会)
上演日:2018年10月20日(土) 15:50会場16:30開演20:50終演
会 場:J:COM ホルトホール大分 大分いこいの道広場 特設能舞台
演 目:能「土蜘蛛」 シテ 観世清和(二十六世観世宗家)
頼光 馬野正基(観世流シテ方能楽師)
ワキ 宝生欣哉(下掛宝生流十三世宗家)
狂言「佐渡狐」 野村萬斎(狂言方和泉流)
舞囃子「高砂」 塩津哲生(シテ方喜多流)
仕舞「 砧」 谷村育子(観世流シテ方能楽師)
発表会:仕舞 「 こども能楽教室」 受講者による発表会
お茶会:呈茶・表千家 悠和会 他
主 催:豊後ノ國 府内薪能実行委員会
能舞台における「影向の松」について
定められた構造で造られている能舞台には大掛かりな装置はなく、通常、「鏡板(かがみいた)」と呼ばれる舞台奥の背景板に「影向(ようごう)の松」と呼ばれる一本の老松が描かれています。これは、かつて能楽が神社や寺院の境内で奉納されることを常としていた時代を今にとどめるもので、「神様の依代である老松」が舞台の正面先にあると考えられており、能楽師たちはその松の前で舞っているのであり、その松の影が鏡のように「鏡板」に映されているとされています。また、その老松は「寿」の字形に似た姿であることから、鏡板に映すその影は「寿」を鏡面反転した樹形として描かれています。
奈良県の春日大社にかつてあったクロマツの巨木が鏡板に描かれた「影向の松」だとされていますが、この老松は1995年に枯死し現在は後継樹の若木が育成されています。鎌倉時代に成立した日本三大楽書の一つ『教訓抄』にも、松は特に芸能の神様の依代とされていたことも記されています。
能舞台に描かれた「影向の松」は「神仏に守られて能を舞う」という能楽の世界観の表れでもあることになります。
別紙資料:4
FLATS(フラッツ)について:
国東時間株式会社が開発したFLATS(フラッツ)は立体イメージをCTスキャンのように輪切状に切断・分解して、それらを再構築する立体造形です。
一つひとつのパーツは固有のカタチと意味を持ちながら、互いに響き合い、等しい関係で全体を構成する「等価(=FLATS)」というコンセプトでかたちづくられています。
FLATSは3次元を2次元に変換してそれをもう一度3次元として再構築します。そこに関与するのはもう一つの次元(時間)です。脳と眼と指と皮膚の感覚、身体時間をくぐらせることによって、ツクル体験を多くの人と共有したいと願っています。
1998年に段ボール製組立式マネキン(2001年グッドデザイン賞受賞)から始まったFLATSは市場からの様々なリクエストに応えながら、クラフト、キャラクター雑貨、ディスプレイ、インテリア、パッケージ、ロボット等へと領域を広げ、商品を開発しています。
製品概要: https://kunisakitime.com/business/flats/
国東時間株式会社(旧アキ工作社)について:
立体造形FLATS(旧d-torso)の企画制作・製造・販売を行う。1998年7月アキ工作社として創業、2018年4月社名を国東時間株式会社に改める。代表取締役社長:松岡勇樹(まつおかゆうき)。資本金:5200万円。従業員数:7人。2009年から少子化のため閉校になった国東半島の中山間部の小学校舎をリユースして事業の拠点としている。第二回大分県ビジネスプラングランプリ最優秀賞受賞。経済産業省「元気なモノツクリ中小企業300社」選出。第四回「ものづくり日本大賞」優秀賞受賞。
会社概要: https://kunisakitime.com
代表取締役・デザイナー:松岡勇樹について
代表取締役社長・デザイナー:松岡勇樹(まつおかゆうき)。1962年大分県国東市生まれ。武蔵野美術大学建築学科修士課程修了。建築構造設計事務所勤務を経て、1998年アキ工作社(国東時間株式会社)設立、マネキン・クラフト製品の開発、設計を行う。日本文理大学建築学科客員教授。